頭の中で組み立てる絵

どうやって、絵を頭の中で組み立てるのか。
ただ言葉だけで表現した紙をべたべたと張った個展を
1960年代初期に開催した人がいた。

オノヨーコ

絵は視覚に訴える物というのが一般的な見解ではあるが、
この人の表現は違った。
言葉を頼りに何かを創造し頭の中で組み立てるのだ。
実はこのタイトル、書店で目にして手に取った本だった。

オノヨーコ著 淡交社 

思わず本の中身をめくった。
絵を頭の中で組み立てるための指示が書いてあるだけ。
絵という対象物で見る側を縛るのではなく、
頭で創造させる自由を与えていた。
凄い美術書。
思わず買ってしまった。
あれから12年たった今も大切にしている。

空

新聞にオノヨーコの記事が掲載されたことがあった。
戦後の苦しい時期、空を見ていたという。
空の表情は幾通りも変化する。
これを”空のコレクション”と表現していたが、
彼女の言葉には創造力を駆り立てる力がある。
オノヨーコという人は偉大な芸術家だと思った。

創造すると言うこと。

夕方帰宅して見ると、
子供達が100円ショップで購入した針金で
ペンチやニッパーを使い、夢中になって何かを作っている。
宿題そっちのけでその作業は寝る時間まで続いた。

息子の作品はまるで”フライドチキン”。
娘のは弦楽器のようだがはっきりしない。

翌日も学校から帰宅して作業を続けていた。一体何事!

出来上がったのは”バイオリン”と”カブト虫”
>>>なんと、あのフライドチキンには羽と足がついていた!!!<<<

 針金細工を見るにつけ”ジャコメッティ”の立像を思い出し、
「それを作って」
 と要求する身勝手な親。
「時間があれば作る」
 と返事する子供達。

しかしなぜ”カブト虫”を作ろうと試みたのか?
実は小学校の図画工作で針金細工を作ることになり、
本人はカブト虫を作ろうと構想を練っていた。
授業という本番に備えて作ってみようと考えた行為だったのだ。

本番の日がやってきた。
さぞや凄い作品ができると期待していたら、
持ち帰った作品にちょっとガッカリした。

カブト虫(針金)カブト虫(工作キット)
針金のカブト虫 と 工作キットのカブト虫

カブト虫は確かにできていた。
しかし工作キットを用いての制作であり、
創造力を高めるにはちょっと限界があるなあと感じた。
娘の小学時代も工作キットを使用していた。
美術の授業も個性化から、
画一化されたものへと変わりつつあるのだろうか?

ちょっと残念。