中島記念館(宮崎県日向市)

宮崎県日向市東郷町の中島記念館(ナカジマアートミュージアム)
川南町の喫茶ベルの奥様がぜひ行ってみてと薦めてくれたところだ。
「本当にあるの?」と言うのが正直な気持ちだったがあった!

中島記念館

私財を投じて造られた美術館。
いい仕事をしながら、 素晴らしい美術品に出会い購入し、
その行為を何十年も繰り返すうちに、 会社は日本有数のものとなり、
美術品も増えて中島コレクションとなった。

思うに、質の良い芸術品の蒐集と仕事は、相互に影響する。
その原動力となったのが、東郷町の自然なのでは。

蒐集した作品の数々を個人のものとせず、
みんなと共有したい設立者の思いがひしひしと伝わってくる。

残念なのは地域の人が知らないこと。
「美術館」ではなく「記念館」という名称が妨げになっているのか?

絵画での常設作品は日本画。
日展や院展の最高峰が、軒並み名前を連ねる。
これらの作家の多くは、リトグラフも多く出回り、
美術の教科書にも載っているので、一度は目にしたことがあるはず。

私も登場する作家の数人の作品は、三越の個展で見たことはあるが、
それでも、その会期が終わると本物にお目にかかることはない。
リトグラフなどの展示即売はあるものの、
本物との落差はあまりにも大きい!
でも、ここにくれば、本物がすぐ観れるというのはありがたいこと。
しかも間近で。

中島記念館のパンフレット  中島記念館のチケット
パンフレットとチケット(500円)

「山」を題材にする作品が多かったが、
同じ山をそれぞれの作家がどうとらえて描いているのか。
それを知るだけでも楽しい。
平山郁夫、加山又造、横山大観、片岡珠子、難波多目項一・・・。
難波多目項一は「不二」というタイトルでモノトーンの山を描いていたが、
川南町のトロンドームにも山内一生による
和紙を用いたモノトーンの雪山があり、頭の中でそれを比較して楽しんだ。

所蔵作品
中島記念館の所蔵作品(その他の作品は、中島記念館のサイトで)

上村松園、伊東深水の美人画どこが違う?
杉山寧の鹿、高山辰夫の描く女性、玉堂の筆跡。
松園の孫は大きなとても大きなキャンバスに鳥が2羽描かれていた。

この時期東郷町は梅が満開だった。
とげとげしくて、近寄りがたい梅の木には花が咲いた!
その特徴を良く捉えた前田青邨の作品。

リトではよく目にする中島千波の花の絵はとてもきれい。
実物は迫力があった。

そして川南のお店で目にした小倉遊亀の作品がここにあった。
花瓶に椿(だったかな)。あれはほのぼの、これは凜としている。
105歳まで生きて生涯現役。すごい!
長生きの秘訣は何? 教えて!

比較的なじみのある有名画伯の作品が多い中、
後藤純男の「新雪大和」は新鮮だった。
手前で観ると建物が写実的に描かれ、ちょっと後ろにバックすると、
ぼけていたはずの背景がはっきりわかり、
手前の建物がより鮮明に浮かび上がる。驚嘆した。

ベン・ションゼット(超現実主義)という画家は、
写真を用いて自分の世界を表現したけれど、
その中であの時買っておいたらと思う作品があった!
透明のコップに、すみれがぽんと1~2輪。
たて長い額縁下の方に、ちょこんと鮮明に映し出されて、
その後ろがぼけていて、なんだかよくわからない。
けれど、ちょっと後ろに下がると、それは教会のステンドグラス。
タイトルは覚えてないが、あの時、神に祈っているような心境になった。
この不思議な感覚は20年たった今でも、脳裏に焼き付いていて、
同じような表現者がここにいて、ちょっとうれしかった。

常設展は3月入れ替えとある。
荻須高德、小磯良平、梅原龍三郎で観てみたい。

カフェテラスケーキ
併設されているカフェテラスとキレイな色のケーキ

ところで、多目的ホールはなにを展示するのだろう。
千住真理子のバイオリンをききながら、
千住博の日本画を観るのもいいかな!
シルクスクリーンで一度目にしてとっても良かったので。

あそこのホールに自分の好きな作家の作品を並べたところを
頭の中で組み立ててみるのも、また楽しい。

とにかく次の展覧会を待つべし。

ギャラリーSHOP侑(宮崎県川南町)

川南町の古いお店にあるのは、
親しみやすく可愛いらしい絵として誰でも知っている岩崎ちひろ。
当時、心をうきうきさせる作品はとても少なかった。
だからこそ、1980年代に登場したヤマガタ・ヒロミチ作品には驚きがあった。

ギャラリーショップ侑

ギャラリーSHOP侑。今年2月オ-プンしたばかり。窓からのぞくと
白い額縁に入った版画(シルクスクリーンかラバーポイントか)。
作者はヤマガタ・ヒロミチ(ヒロ・ヤマガタ)。
金閣寺に色鮮やかな花、風船を持った人たち。
このお店の雰囲気によく合っている。

ギャラリーSHOP侑店内

1990年前後からあちこちで個展が開催され、
版画なのにその高額さに驚きもした。
そんなイメージがつきまとって今に至るけれど、振り返って考えてみると、
お茶の間をパアッと明るくする作品の代表格だったのかもと思う。
高鍋町のブレインという喫茶店には初期の作品があって、
店内を明るく楽しい感じにしている。

バブルの象徴のイメージはぬぐいされないけれど、
普段の風景をあんな表情にして描くのはヤマガタ・ヒロミチならではのもの。
近年新しい作品が日本では紹介されていないが、
もう二度とあの手の作品を描く事はないだろう。
作家にとって大衆が支持した作品が、
あんなべらぼうな金額で売買されたのは、不本意な事だったはずだし。
そう考えると、時代が生み出し国内に広く流通された作品も
今となっては懐かしく、貴重なのかもしれない。

金閣寺

個人的には初期の作品から現在の作品まで通してみてみたい。
売るために描かされたものでなく、
本当に表現したいと思って製作した作品も存在するだろうから。

例えばアルフォンス・ミュシャは、
サラ・ベルナールをモデルにしたポスターで一世を風靡し、
今もその当時の作品が強調されるけれど、描かれた時期はとても短い。
みんなが知っているのはその頃の作品。

なんだかこの二人どこか類似点があるなぁと口に出したとたん、
「私ファンなんです。」と言いながら、
お店のおねぇさんがミュシャのポストカードをたくさんだしてくれて、
そのタイミングの良さにびっくりした。
アートの話で花が咲き楽しい瞬間だった!

ミュシャの回顧展はたびたび催され理解も深まるが、
ヤマガタ・ヒロミチのものはない。
あれだけ売れたのだからあってもいいのじゃないかな。