はんにゃはらみつた

堀文子という日本画家の作品を目にしたのは、
丸善に時々出張店舗を開いている・・・画廊だった。

本屋の一角で所狭しの中、一瞬にして客の目を引かせる為には、
やはり、ピカソ・ミロ・ミュシャ・ブラック・シャガール・
上村・・・東山・・平山・・などの
超一流どころのリトグラフやエッチング。
日本画家の作品はリトなどにするとどうしても見劣りがするが、
海外作家の作品に関しては、
普段目にする事のない優れた作品がたくさんある事に驚く。
しかも昔に比べ比較的安くで買える。
そんな中、自分の目線よりも高い位置にある
色紙サイズを一回り小さくした作品に強く惹かれた。
描いているものはそんなに込み入ったものではなく、
比較的単純なものではあったが、迫力があった。
手描きである事も一つの要素かも知れないが。
それとはまた違う何かがあった。

作者は「ほり ふみこさんという方」です。
そう教えてくれた。

それから数ヶ月、
本屋で生命科学者・柳澤桂子の著書に出会った。
『生きて死ぬ智慧』小学館。
その表紙に画・堀文子とあった。
何といううれしい偶然!
本の中身はお釈迦様の説いた般若心経が教える
『空(くう)』の世界を作家の解釈で訳したもの。
大きな字で比較的読みやすい。

空の境地とはなんぞや?
と読み進めていった次のページはすべて絵。
文字は黒地に白抜きで印刷されているためか、
選んでいる作家の作品も色調は暗い。
故に作品が語りかける力は強い。

初期の作品もおもしろいし、
1998『ヒマラヤの夕映え』は、実際山に登らないと描けないだろうし、
1982『霧氷』は、寒さの中、樹木はひょうひょうと空・天に向かっているし。
1990『麦畑に芥子が咲く』は、畑から見える空がとてもいい。
無の境地で描いたのだろうか?
文章と絵があっている。

一度、堀文子の作品を見てみたい。
(自分の予算の範囲内でよい作品を手に入れたいと思うなら・・
この本はおすすめです。)
ちなみに、衣類であればユニクロだとか

祈りたくなる、不思議な顔

何の変哲もない無機質なデジタルアートととるかもしれない。
どちらも同じ顔。でも違う。
片方は三つ編み、もう片方はイヤリングをつけたショートヘアー。
しかし、それらはちょっと間をおいて描かれており、
二つの顔を同時に集中して見るのはむずかしい。

左を見れば右が弱く、右を見れば左が弱く見える。
これを何とか解消したい!
頭の中で二つ同時に視界に入れて比較を試みるが、至難の技。
その距離を作為的に縮めるのは不可能だと気づく。なぜ?
(左・右それぞれの顔をゆっくり見た後、全体を見渡す。
これを何度か繰り返してたどり着くのが、創造の世界。)

子供から少女へ、または少女から女性へ、
現在から未来へ成長もしくは成長するだろう過程を表現しているとすれば
顔と顔とのスペース(距離)は?
時間の経過を意味するものであり、縮められるはずもない。
面白い作品にであった!!!

威風堂々。
時間をかけて・・・ずう~と眺めて欲しい。
素敵なメッセージを発してくれているような感じがしてくる。
その顔はまるで仏さま。
あやちゃんが14か15歳くらいの作品だそうだ。
絵の解釈はこちらの見方・感じ方でいかようにでも変わる。
その時々によっても。

このところ、彼女のはがきサイズの作品と
一冊のハードカバーの本を毎日持ち歩いている。
柳澤桂子著・堀文子画『生きて死ぬ智慧』。
好きなページを開き、その上に作品を置いて眺めている。
開いたページを額縁とみたててのことだが、
電車やバス・公園のベンチ・喫茶店のテーブル、
どこでも鑑賞できるのがいい。
ちょっとした、私だけの、手作り美術館。