エルザ(宮崎県高鍋町)

昔からある高鍋町の喫茶店。1960年代に創業されたかと思う。
高校の帰りによく立ち寄った。

エルザ

いろんなコーヒーの種類があり、値段も高かった。
キレイなカップに注がれたコーヒー、その雰囲気を楽しめた。
カフェオーレとは? 注文して初めて知る。
空のカップがきて、ミルクとコーヒーの入った金属製のかっこいいポットが2つ
カップの両サイドにおかれて、どうやって飲めばいいのかためらった。
好奇心旺盛なあの時代。中身を知りたくて、片っ端からメニューを見て、
値段と相談しながら、注文していた。
フレンチトーストもここで初めて食べた。本当においしかった。
中のインテリアも見たことのないものばかりで、本当に気持ちが高揚した。

エルザ入口

食と音楽と絵画やオブジェ。
今にして思うと芸術や異文化の発信地という役割を
喫茶店が果たしていたのかも。時代の変遷とともに内容も変わったが。
外観も凝っている。ドアの細工。当時のことを思いだし扉を開けてみた。
おもしろいランプを見つけた。ランプを支えるスタンドがとてもおもしろい。

ねこのランプ

熊谷守一の絵(リトグラフ)があった。
単純だけれどインパクトがありインテリアとよく調和する。
「昔薦められてかったけれど、いくら見ても飽きませんよね」と店主。

熊谷守一

あわせて、これも読んでみるとよいと差し出してくれたのが、熊谷守一の画集。
陽が死んだ日」という自分の幼い子供が亡くなる姿を油彩で描いた作品を
読売新聞(芥川喜好の解説)で見て衝撃を受けたことがある。
つらい場面をどうしてこんなに客観視できるのか?
その絵は画集にもあった!なんと47才の時の作品だった。
晩年はエルザにあるような作品になるが、
この本を読むと絵が変化していく過程がよくわかる。

絵が動く!~まちなかギャラリー夢たまごにて~

御年94歳。中央の画壇とは無縁ではあるが、宮崎では知る人ぞ知る
西都市在住の弥勒祐徳先生の個展があると新聞で知りのぞいてみた。
(私個人は、ギャラリーしんとみで、先生のことを教えてもらったのが始まり。)
絵もさることながら著書も多く、一度先生の文章に触れると
その表現力の素晴らしさに引き込まれてしまう。芸術家なのだ。

弥勒先生の絵の特徴は何と聞かれたら?
本のタイトル通り、「絵が動いている。」と答える。

絵が動く

目に入ってくる風景を単に描くのでなく、桜が風になびいたり、
光にさんさんと照らされる瞬間といった、
とらえどころのないものを表現している行為に、ただただ驚いてしまう。
描けそうだけれど描けない絵だ。

さくら

桜の下に人や車が描かれている。
大自然の中の人々はなんだか雑草に思えてくるし、車はおもちゃのようだ。

さくらと車

比較するなんてとても失礼なことではあるが、
大自然や何かとてつもなく大きいものをバックに人々を小さく描く
山下清の世界に通じる気がしてならない。山下清の「花火」
大勢の人を手前に、花が一瞬に散って消えて・・・。その繰り返し。
いくつもの花火を同時に花咲かせ、私たちに見せてくれている。

先生が立体のキュービズムと称した佐土原人形。
西都原の桜をモチーフにした色紙もお手頃価格で展示即売されていたが、
これも大変味わい深いものだった。

佐土原人形