1人の男性が蒐集した浮世絵が、どこかの美術館に寄贈された。
保存状態が非常に良く、近々一般公開しますという新聞記事を読んだことがある。
非常に昔のことで、はっきりとはしないが。
その男性は生涯独身を貫き、仕事で稼いだお金で浮世絵を購入していた。
その数は相当なものだったらしい。
この男性はどういう思いで買い求めていたのか。
持っていたら やがて価値がでるなどと考えていただろうか。
たぶん違う。生きる糧だったのでは!と思う。
良い絵と出会う。僅かなお金を貯めて手に入れる。
それを何度も繰り返しているうちに、手元に絵が残った。
一見孤独のようにも見える人生。
しかし生きる過程において、
絵とともに幸せな時を過ごしていた様に思えてならない。
浮世絵に魅せられ蒐集した作家がいる。
ビンセント・ヴァン・ゴッホ。
絵が売れず絵の具代を調達するにも苦労していたゴッホ。
彼の作品の中には浮世絵を模写したものも存在する。
広重を通して映し出された日本の風景に何を感じていたのか?
当時のヨーロッパ絵画にはない開放感があったのかも。
貧乏して手に入れた絵。
苦痛を伴ったとは思えない。満足感があったはず。
>>>彼が絵描きであるとともに、
蒐集家であったところに私の勝手な想像がはいる。
あくまでも、素人考えなので悪しからず。<<<
絵は宗教であり哲学という要素も兼ね備えているが、
浮世絵はその時代の大衆文化を知る上で優れている。
人物や風景、どこか自由で伸び伸びとしたところが、
ゴッホのみならずヨーロッパ人には受けたのかもしれない。
印象派から近代作家にいたるまで、その作風に影響をもたらしたのだから。
絵を買い求める人の心理状態はいかなるものか?
芸術が精神の栄養とするなら、贅沢品でもなければ投資でもない。
すばらしい絵に巡り会うと、先人がどういう思いで手に入れたのかを考えてしまう。
絵が好きで眺めると言う行為と好きな絵を買おうとする行為は違う。
骨董屋で偶然目にした浮世絵。
とても気に入って、じっと見入っていたら、
これは正真正銘”広重の作品”と店主が教えてくれた。
「すっきりしてるでしょう?」
まさにその通り。
見ていて何も疑問がわかない。すーっとはいってくる。
あの時の店主の言葉は、浮世絵を見るときの判断基準になっている。
心残りは価格を聞き出せなかったこと。
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